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第11回目のクリエーター講師/タワーレコード小針勉(こばりつとむ)

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小針勉

Information

斬新な広告戦略を次々に仕掛けるタワーレコード株式会社に勤める小針勉さん。
子どもの頃に音楽の持つ力に魅了され、これまでの人生を音楽と共に歩んできた。

1限目:ストーリー

小針勉

高校音楽への目覚め
小針勉(以下K)
音楽を意識し始めたのは小学校4年生のころ。スペランカーっていう超B級のファミコン・ゲームがあったんだよね。ゲームの内容はB級でも音楽は秀逸だったんだ。ゲームオーバーになったときに流れるメロディが美しすぎて、思わず僕、泣いちゃったんですよ。そこが音楽の力ってひょっとして凄いんじゃないかって思うキッカケだったんだよね。  当時はラジオやLP盤カセットでダビングして音楽を共有していた時代。
僕の周りに音楽を共有できる友達が複数存在した環境も良かった。時には彼らとは音楽性の違いでぶつかったりもするんだけど、相手の感性や主張も自分なりに受け入れて音楽に対しての素養を磨くことができた。今の時代だと音楽配信等の普及により100万ダウンロードされるっていうのはその音楽を100万人が聴いているってきとだけど、当時はそうやって家族や友人と音楽を共有していたから、売れた枚数に対してその数倍の人が聴き、語っていたんだよね。だから、時代を超えた普遍的な国民的ヒットも多数あったと思うんだ。
生きる活力を与えてくれたもの
大学には行かず、専門学校に2年間通っていたんだ。
早く大人になりたいという願望が強く、とにかく親から自立して一人になりたかったんだよね。でも、実際学校にはほとんど行っていなかった。

実は当時借金があって、バイト代で返済する毎日。しかも19歳の時に子どもができて生活が一変。借金は返さなきゃいけないし、子どもは育てなきゃいけないしで、当時はずっと働いていた。でもうまくいかないことが続いてアルバイトも転々とした。学校にも行ける状況じゃないし、職もない状況が2週間も続くと、人って鬱になるんだよね(笑)。その時の精神状態では、大好きでよく聴いていた当時流行っていたポピュラー音楽がうわべだけに聴こえて、全く受け付けなくなってしまったんだ。

そんな時に、裏渋谷系とかデス渋谷系と呼ばれていた、暴力温泉芸者やボアダムス、メルツバウなど、いわゆるアンダーグラウンドのジャパノイズと言われる音楽に出会い、傾倒していったんです。健康な人には雑音に聞こえるかもしれないんだけど、当時の僕には髪がかった音楽に聴こえていたんだよね。本来、音の持つ響きの“音霊”。あるポイントで、光を放つんだよね。生命の神秘に近しいその体験があったから、立ち直ることができた。また頑張って生きようって思った。生きる活力を与えてくれたのはその時の音楽だったんだ。
音楽が人をつなぐ
もともとは、たくさんの人に自分の好きな音楽、メッセージを送りたくて、ラジオのディレクターになろうと思っていた。知識をひけらかしたいっていうよりは、いいものを見たり聴いたりしたら、純粋にそれを人に薦めたいという想いが強くあって。

だけど、ラジオ局の入社試験にすべて落ちてしまった。

次に何ができるかなって考えたときに思いついたのが、レコード屋だったんだよね。
そこには僕のしらない音楽がたくさんあったから、いろいろな音楽を吸収して、もっといいラジオディレクターになるんだって思っていた。そうしてありとあらゆるレコード屋に履歴書を送った結果、タワーレコードだけ連絡が返ってきた。

そこでしばらく、学生バイトとして働いた。はじめは学校の卒業を機に辞めるつもりでいたんだよね。だけどちょうど卒業間際に、タワーレコード渋谷店が宇田川町から今ある神南に引っ越すと聞いて。あんなところに丸ごとレコード屋ができるって、凄く夢があると思ったんだよね。大きな仕事だし、体験したいと心から望んで、そのままタワーレコードに残ったんだ。

僕はその当時、まだ音楽を触らせてはもらえなかった。オープン当事はTシャツや音楽アクセサリーを扱う責任者だったんだけど、そこで良かったのは、全フロアを回るから、各ジャンルの担当者と仲良くなってたくさんの音楽を教えてもらい、出会えたこと。いろいろな音楽を聴き、知っていく中で、パズルが組み合わさっていくような感覚を覚えたんだ。そこで得た知識を生かして、自分で仮説を立てて売り方もいろいろ工夫してみたり。転勤してからも、売り場では常に提案を心がけ、お客様にアプローチすることを楽しんだ。結果、お客様と仲良くなってイベントに来て頂けたりもした。
そういうところで人がどんどんつながっていけるっていうのが音楽の魅力だと思うんだよね。聴覚ひとつ研ぎ澄ましていれば、それが全てになる。人とのつながりって意識してしまうとどこかぎこちなくなってしまうけれど、音ならそういうのを取り除いてくれる。僕にとって音楽は自然に人とつながることができるツールなんだ。
身をもって知れ
もちろん失敗は数え切れないほどしてきました。
失敗の数なら会社でもトップクラスです(笑)。宇都宮店に異動になった時に、渋谷店のノリでバンバン注文したら、半年で1年分の発注をしてしまったり。当時は始末書を書かされてすごく怒られたけど、学ぶために失敗させてもらってたのかなって今は思うんだ。

身をもって知れ、っていうスタンスで失敗を許容して経験を積ませてくれた上司や会社には、すごく感謝している。

それから、タワーレコードには音楽に熱心でパワーのあるスタッフがたくさんいるんだよね。自己主張の激しいスタッフも多く、時には本気でケンカもするけど、それは必要なディベートだと思うんだよね。解決の仕方を自分たちで学んでいく。それが脈々と受け継がれているのは、この会社の面白いところだと思う。
レコードの役割
僕らの仕事は、簡単に言うとパッケージ販売なんだけど、深堀していくと、演奏者と鑑賞者の距離をいかに縮めるかなんだと思う。

アーティストとお客様のちょうど中間にいるのが僕たち。
アーティストが作った作品を預かって、それを求めるお客様を迎える。そこでしょっぱい展開のものしか無かったら幻滅されちゃうと思うんだよね。だから、お客様がわざわざ足を運んでCDを買ってくださる時には、最高の形でお渡ししたい。それを意識してやっていれば信用してもらえる。さらにそれを最大化することで、ユーザーとアーティストのシンパシーが大きくなっていくし、それを伝播することもできるんじゃないかな。

『NO MUSIC, NO LIFE. TOWER RECORDS』のコーポレート・ボイスの体現を通じ、いつも【音楽】自体を応援していくことをテーマにしていきたい。新作の販売だけでなく、旧作に至るまで、良い音楽をいつでも購入していただける環境を持続していくべきだと思っている。 

2限目:Message

学生へメッセージ
若いうちに自分に蓋をしないでいろいろトライした方がいい。
僕は、思っていてやらないことって罪だとすら思ってしまうんだよね。仕事だけでなく、興味があることは取り敢えずいろいろやってみる。
そうすると、自分に合ったものを見つけられると思うんだよね。経験がないってことは人生をすごくロスしていると思うんだよね。

僕は好きなことを仕事にしたけど、そこにギャップを感じたりはしていない。
それはお客様と触れ合うことでバランスをとれているからだと思う。僕に惚れてもらおうと思って接客をやってきたからね。

世の中には好きなことが仕事にならない人もいると思うけど、それもやってみないとわからないよね。自分にフィットするものがみつかったら、今度はそれを最大化するためにどうずるか。苦手を克服することも大事だけど、得意なことを伸ばすことも大事。嫌いなことをやった後って精神的に疲れるんだよね。だけど好きなこととつながっていることをしている時は、疲れが心地いい。それがいい仕事をしているっていう実感につながっていくと思う。
 

プロフィール

小針勉

タワーレコード株式会社
小針勉(こばりつとむ)さん

販促/マーケティング本部
商品販促統括部 販促企画部部長 兼
店頭販売担当 部長 兼
『TOWER』誌担当部長1990年5月7日生まれ。